背景
CTOA Advent Calendar 14日目の記事です。
CTOの役割や業務については他の素晴らしいCTOが書いてくださっているので、この記事では会社員エンジニアとして働きながら事業アイデアを仮説検証し、自社プロダクトのスタートアップを立ち上げるまでの話をしたいと思います。
一般的にスタートアップを立ち上げるのはハイリスクと思われているかもしれませんが、しっかりとリスクヘッジをすれば超低リスクにスタートアップを立ち上げることができると、実体験ベースで思いました。今回はリスクヘッジの要点を5つに絞ってそのコツをお伝えできればと思います。
概要
- 私の人生の目標のうち、一部を抜粋します。
- 0からサービスとビジネスを作る。
- 世の中を効率的、便利、公平にする。
- そのためには、スタートアップをやろうと20年前からの目標です。
- そのためにはITを使ったスタートアップを立ち上げるというアプローチが最適でした。今はその実現途中であり、株式会社マインディアのCTO 3年目です。
経歴
経歴だけだとつまらないので、一言コメント付き。
- 2005年 慶應義塾大学 環境情報学部 卒業
- (研究室に寝泊まりの日々)
- 2006年 UCLA Extension ALC high intermediate 修了
- (IT業界で生きていくには英語が必須だと思い、とりあえず海外へ。)
- 2007年 – 2009年 某社にて自社ECサイト開発
- (知り合いの会社に呼ばれたので、帰国してシステム開発、サービス立ち上げ。)
- 2009年-2011年 コーチ・ユナイテッド株式会社 にてcyta.jpを0からのサービス開発・運用
- (前職のときに土日で手伝っていたサービスが大きくなってきたのでフルタイムへ)
- 2011年 – 2013年 グリー株式会社 にてソシャゲDevOps、海外展開、2ndゲーム運用、チームマネジメント
- (大規模トラフィックを扱いたくて)
- 2014年 – 2018年 株式会社メタップス にてSPIKE決済サービスを0から開発・運用
- (手数料ゼロの決済サービスを使いたい!と思って話を聞いたら、流れで開発する側になっていた)
- 2019年 – 株式会社マインディア にてCo-founder CTO
- マーケティングにおける調査を効率的にして、ITを活用したインサイトを生むために!
重要な5点
起業までに必要な重要な点を時系列で整理しました。
1.自分自身の価値観を整理し準備する
スタートアップは辛いことが多いので、自分の得意なこと、性格、ゴールなどは明確にしておきます。
なぜなら、一緒に組むメンバーを探す時やサービスを考えるときに、目標や価値観が違っていては議論の土台が変わってしまうためです。3年後の売上を年1億円目指すのか年100億円を目指すかによってパートナーやアプローチが変わってくるためです。
また、自分自身の強みを客観的にも把握しておくことをおすすめします。自分では気づけなかった強みを見つけられると思います。
例えば、CliftonStrengthsをやってみるなど。CliftonStrengthsの思想は、苦手分野を克服するより得意分野を伸ばしたほうがパフォーマンスが上がるので得意分野を知って継続的に研鑽するという考え方です。(統計的裏付けもあるみたい)。その得意分野は下記に記載のとおり34項目あるそうです。
私の2018年ごろの結果は以下です。
- 未来志向
- 目標志向
- 戦略性
- 親密性
- 個別化
2. 信頼できる人とやる
基本的にエンジニアはエンジニアリングに集中するのが得策かと思っております。経営、マーケティング、ファイナンスのプロと話すとわかりますが簡単に習得できるような職種じゃないと感じました。
そのような分野は専門家に任せたほうが良いので、スタートアップをやるときには誰か組むのが一般的かと思います。
そのときに一番根底にあるのは信用・信頼です。
私は過去に騙された経験がありますが、騙された場合はその事業に掛けた数年間の時間やお金を失うことになります。最悪お金はなんとかなりますが、時間が奪われると取り返せません。
信頼を少しでも担保するためには一緒に働いたことがある人や、友人、リファレンスチェックができるような人と組みましょう。
私が、出会った信頼できない人の行動例
- 超ケチ
- 自分の懐だけ潤して、社員や関係会社の利益はあまり考えない。
- 一緒に儲けようというチームプレイができない。周りの人がチームプレイをしているつもりでも騙されている場合がある。
- 女性関係が派手、社内の人と真剣ではない交際をする
- 色々と面倒なことを引き起こすリスクがあります。
- ビジネスとプライベートの区別がつかない。経営の意思決定がブレる。
- 口だけで実績が伴っていないまたは、実績が客観的に判断不能
- 喋りやポートフォリオがとてもきれいに見えるけど、実際に働いてみたらパフォーマンスが上がらないような人は多い。その人が行った実績を別の手段で評価しましょう。
- その本人の実績がよくわからない状態ということは、殆どの場合でその人が実績を上げていないからです。
例外があり、死ぬほど頭の良い人とは組んだほうが良いという反省はあります。死ぬほど頭の良い人は、他人にもちゃんと利益を与えることを軽視しないし、ビジネス自体の成功確度が高いです。
また、ファイナンスや経営の知識を自分で習得して会社経営を全般的に自分でハンドリングできるならばあまり重視する必要はないです。しかしながらエンジニアリングとは違う領域なのでハードルは高いです。
3. どこのフィールドで活動するかを計画する
この選択はロールプレイングゲームに言い換えると、その後の難易度がイージーモードかハードモードかが変わってくる非常に重要なポイントになります。
シンプルですが、以下のようなフレームワークを使って、作ろうとするサービスやビジネスの仮説を検証します。
- マーケティング環境分析と市場機会の発見
- セグメンテーション(市場細分化)
- ターゲティング(市場の絞り込み)
- ポジショニング
- マーケティング・ミックス(4P)
まだこの段階ではリサーチ段階なのでいくらでも立ち戻れます。起業は手段なので焦って起業しないようにしましょう。
私の場合は、代表の鈴木と定期的に電話などでビジネスのディスカッションをしていました。その中で、上記のフィルタリングをくぐり抜けたのがオンラインでの定性調査サービスでした。
この仮説検証の段階で私がどうにも理解し難かったことが1つありました。それは、「オンラインでのインタビューがほとんど行われていないこと」です。オンラインで定性調査を行うサービスを作っても、実はすでに提供している会社がありましたというオチになるのではないか?とずっと思っていました。
よって、他のプレイヤーが立ち上がったらやめようというくらいのノリでした。しかしながら競合プレイヤーはなかなか現れませんでした。自分の中では当たり前でも、他業種では当たり前ではないことが多数あることを体感しました。
実際のところ、「言うは易し行うは難し」という言葉そのもので、実装してみると色々と大変でした。既存業務のリプレイスは要求が多くて大変です。
4.プロダクトは自分の手で作る
私の場合は、平日は忙しいので毎週土曜日をこのプロジェクトに使うというスコープで時間を投資していたため実装を自分でやっているとプロトタイプの完成が遅くなって良くないと考えていました。
そこで、設計の重要なところだけを自分で行い、実装は外部に任せるというアプローチをとることにしました。
しかし、いま振り返るとこの意思決定は間違っていました。
会社で開発を行うのと個人で開発を外注するのは大きな違いがあります。それは予算です。
普通に考えると実装で最低でも300万円ぐらい掛かりそうな内容でしたが、この段階ではこの金額をかけて作り込むほどビジネスプランが作れていないので300万円をかける意思決定はできません。そこで、安く請けてくれる海外のオフショアへ発注することにしました。要件定義、外部設計、内部設計まで私の方で行って実装を依頼しました。
設計書の一例
MySQL Workbenchの内部設計
しかし、最終的に上がってきた成果物は意図したとおりに動かず、動作させるために自分でコードを修正してました。
結局はほとんどのコードを書き直しました。振り返ると、自分でゼロから書いたほうが早かったです。
時間がかかるけど、お金をかけないでやるためにはしょうがないです。自分で書きましょう。biz側にも納得してもらいましょう。納得してくれなければ優秀な人を雇うお金をポケットマネーで出してもらいましょう。時間をお金で買うかどうかという視点で、資金調達をするかどうかの議論が行われました。
記念すべき最初のコミットログを貼り付けておきます。
5.仮説・検証を回しまくる
Thread.new { `一緒にやる仲間を探す` } while (お金を払っても使いたい会社数 < 5) `無料で使ってもらう。` `フィードバックをもらう。` `修正する` end
リーンスタートアップのBuild-Measure-Learnにあたるところです。期間は半年ぐらいやりました。
余談ですが、プロダクトを開発し始めた2015年ごろのWebRTCは対応ブラウザが少なく、実装がかなり不安定でした。つらすぎてFlashに変更するか?と何度か考えましたが、結果的にはWebRTCを使い続けて本当によかった。。。今となってはWebRTCを利用しない日は無いくらいに普及しました。
ここでの粘りが、後々の貯金を作ります。運用や会社が走り出したら収支を気にしながら行かなければいけないので、収支を無視してこだわりの実装やリファクタリングをやるならこのタイミングでとことんやっておきます。
そして会社設立へ!
テスト利用をしてもらっていたら、有償で利用してくださる会社が現れました。有償で使ってもらうためには機密保持契約や基本契約書を交わす必要があります。大きめの企業だったので個人では取引のための契約が締結できないので、このときに法人が必要になりました。自社プロダクトのサービス提供を行う場合、実は法人設立は必要になったタイミングぐらいでも良いのです。
脱サラをする際には信用が必要なものは行使しておいたほうが良いと聞きました。会社員でなくなると、銀行が評価する与信枠が減ります。住宅ローンを組む際の金利が優遇されなくなったり、クレジットカードの審査が通りにくくなるとのこと。
特に上場企業勤務×勤続年数が長い場合は、与信枠が多い状態だったりするため、どのタイミングでそのカードを切るかは自分のライフプランも考慮したほうが良いかと思います。
ちなみに、物理オフィスはこの時点では不要だったりします。
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